【北朝鮮「衛星」】再度、発射中止を求める
2012年04月10日08時26分
なぜ北朝鮮は世界から孤立する道を選ぼうとするのか。大きな疑問が解けないまま、この国が「衛星」打ち上げと呼ぶロケット発射の予告日(12~16日)が迫ってきた。
あらためて発射中止を北朝鮮に強く求めたい。
先月中旬の予告以後、日本をはじめ国際社会は、北朝鮮に弾道ミサイル関連のすべての活動停止を求めた国連安保理決議に違反すると、発射に反対してきた。
一方、北朝鮮は「打ち上げるのは地球観測衛星で、平和的な宇宙開発が目的」と主張し、事実上の長距離弾道ミサイルと見る日米韓などは不信感を強めている。
安保理決議は2006年、北朝鮮による弾道ミサイル発射と核実験を受けて全会一致で採択された。国際社会の強い懸念を背景に、経済・外交制裁を規定した決議で、北朝鮮への物品の輸出禁止などが盛り込まれた。
この制裁以後、北朝鮮の食糧事情はより深刻化したはずで、それが米国へ食糧支援を求めたことし2月の米朝合意につながったとみられている。
ただ米国は「衛星」が発射されれば食糧支援を行わない考えだ。そんな状況を自ら生み出そうとしている金正恩・新体制の真意はやはり分からない。
故金日成主席の生誕100年となる今月15日を北朝鮮は富強国家「強盛大国」入りの節目とし、それに合わせて「衛星」発射を計画したとされる。「宇宙開発」を正恩体制の実績として内外にアピールしたい思惑もあるのだろう。
しかし餓死者が出ているとされる食糧事情を改善せずに、どこが強盛大国入りなのか。「平和目的の宇宙開発」以上に新リーダーには、なすべきことが山ほどあるはずだ。
8日には発射場や「ロケット」「衛星」などが公開された。秘密主義国家の北朝鮮からすれば異例のことだが、「ロケット」と長距離弾道ミサイルの違いは外観だけでは判断できない。
韓国メディアによると発射後に核実験を行う兆候もあるという。09年にはミサイル発射と核実験が短期間に続いて行われた。そうした前例があるから国際社会は警戒を強めている。
発射されれば懸案の6カ国協議再開はさらに遠のいてしまう。北朝鮮に影響力のある中国やロシアとも協力し、発射予告のぎりぎりまで国際社会が中止を求める声を上げ続けたい。