社説:B787緊急着陸 安全確保へ最善尽くせ

 

最新鋭旅客機ボーイング787の安全性に対する信頼が揺らいでいる。飛行中の発煙などトラブルが相次いだためだ。日米など各国は同型機の運航停止を航空会社に指示した。大惨事につながる可能性があるだけに運航停止は当然である。787は機体の35%が日本製の「準国産機」。日本の技術力への信用が低下しかねない事態ともいえ、原因の徹底究明が急がれる。

 

発煙トラブルは16日、山口から羽田へ向かう全日空機で発生。高松空港に緊急着陸し、脱出時に乗客3人が負傷した。日本製のリチウムイオン電池や、周辺のシステムが原因との見方が強まっている。火災発生により機体が制御不能となるような事態は万一にもあってはならない。急降下する機内には焦げた臭いが漂ったといい、乗客の不安はいかばかりだったか。

 

燃料漏れやブレーキの不具合など787のトラブルは昨秋から目立ち始め、今月に入ってからも7件立て続けに起きている。7日には米ボストン国際空港で駐機中の日航機のバッテリーが燃え、問題視されていた。

 

そもそも787は開発段階から不具合が多く、納入が予定より3年以上遅れた経緯がある。納期をこれ以上遅らせないために製造を急ぎ、それが一連のトラブルを招いたとの指摘もある。にもかかわらず、国土交通省は当初「新造機にありがちな初期不良」との見解を示していた。結果的に甘かったと言わざるを得ず、安全確保に対する姿勢が問われよう。

 

トラブルが相次ぐ中で機体を使用し続けた航空会社は、利益やメンツを優先させたと言われても仕方がないのではないか。安全第一という基本をいま一度肝に銘じてほしい。

 

787は二百数十座席の中型機で、一昨年に国内2路線でデビューした。機体に炭素繊維複合材を使うなどして軽量化した結果、燃費が従来機より2割近く向上し航続距離が伸びた点が特長だ。燃料費を節約できる上、大型機しか飛べなかった長距離路線への投入も可能となった。航空会社の期待は大きかっただけに、今回のトラブルに各社は衝撃を受けたことだろう。

 

全日空と日航の国内大手2社も787の導入を急ぎ、昨年末には全日空が秋田羽田間の3月就航を発表していた。両社とも787を今後の主力機と位置付けており、運航停止が長引けば経営戦略の大幅な見直しを迫られよう。さらにはバッテリーや主翼、炭素繊維複合材などを供給する国内メーカーへの影響も危惧される。

 

とはいえ安全に勝るものはない。緊急着陸した機体を調べるため米政府の調査団が来日したが、日米航空当局やボーイング社、関係航空会社は緊密に連携して原因を究明し、改善策を講じなければならない。乗客の安全、安心を確保するため、必要ならば設計変更など抜本的な対策も検討すべきだ。

 

2013/01/19 付)

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