社説[イラク戦争検証]付帯決議を軽んじるな

 

2013322 0945

(10時間0分前に更新)

 付帯決議というのはそれほど軽いものなのだろうかことのいきさつはこうである

 

 米英軍がフセイン政権下のバグダッドを空爆し、イラク戦争が始まったのは2003年3月20日(日本時間)。大量破壊兵器を隠し持っているというのが先制攻撃の主な理由だった。

 

 ところが、翌04年10月には、米政府調査団が報告書をまとめ、大量破壊兵器がなかったことを明らかにした。開戦の大義が失われたのだ

 

 イラクへの航空自衛隊派遣の2年延長を可能にするイラク特措法改正案を審議していた衆院イラク復興支援特別委員会は07年5月、法案を認める代わりに「イラク戦争を支持した当時の政府判断を検証する」ことなど6項目の付帯決議を採択した。

 

 時の安倍晋三首相は記者団の質問に答え、「付帯決議を当然踏まえながら、よく検討していきたい」と語った

 

 イラク戦争が始まってから20日で10年、付帯決議から6年になるが、政府による検証作業は全く進んでいない。

 

 外務省は昨年12月、民主党政権の下で「対イラク武力行使に関する我が国の対応」と題する検証結果をまとめた。公表したのはA4用紙わずか4枚にまとめた「主なポイント」だけ。とても公表したとはいえないような、おざなりな代物だった。安倍政権も検証作業には否定的だ。

 

 戦争を支持した政府の政策決定過程を検証し、結果を情報開示するのは、国民主権の政治を実質化するのに欠かせない作業である。政府は付帯決議を軽んじてはならない。

 

        

 

 イラク戦争による米軍の死者およそ4500人。イラクの一般市民の犠牲者は12万とも13万ともいわれる。今も自爆攻撃や爆弾攻撃が絶えず、治安は安定していない。

 

 米、英、オランダなどはいち早く検証作業に乗り出した。オバマ大統領は、大量破壊兵器に対する米国の判断の誤りを事実上認め、イラク戦争を終結させた。

 

 オランダは、米英軍による先制攻撃が、国連決議に基づかない国際法違反の軍事行動だったことを明らかにした

 

 開戦と同時に「支持」を表明した小泉純一郎首相は、「自衛隊の活動する地域が非戦闘地域」だと理屈にもならない理屈で自衛隊を派遣し、後方支援や復興支援に当たらせた。

 

 前のめりの支持表明と自衛隊派遣をどう総括するかは、避けられない課題である。ことが戦争加担に関することだけに、政策決定過程を検証する作業は絶対に必要だ。

 

        

 

 政府の中には、同盟国である米軍が参戦している以上、支持する以外の選択肢はない、という見方が根強い。この発想は一見、現実主義的な判断に見えて、実は危険な要素を秘めている。

 

 米軍のするがまま、言うがまま、の思考停止につながりかねないからだ

 

 「米軍の言うことには逆らえない」という思考停止と、「基地は沖縄に」という思考停止が当たり前になっている日本の安全保障政策は、あまりにもいびつである。