TPPと普天間]米国追従が過ぎないか

           

20111114 09

 

 化けの皮がはがれる、とはこういうことなのだろうか。野田政権の「米国追従」が日増しに鮮明になっている。失望と危機感を抱かずにはいられない。

 

 野田佳彦首相は12日、オバマ米大統領と会談し、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加方針と、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた環境影響評価書を年内に提出することを報告した。

 

 オバマ政権から課されていた「宿題」をこなすと、今度は「さらなる進展を期待」され、それへの「確約」を繰り返す。これは到底、外交交渉といえるレベルではない。

 

 「こんな姑息(こそく)なまねまでして前原氏は沖縄でいったい何をしたいのか」。県民の多くがそう訝(いぶか)しんだに違いない。

 

 今月4日、民主党の前原誠司政調会長が「極秘」に来県した。仲井真弘多知事との面談も取り沙汰され、真意を問う声が県内で高まっている。

 

 前原氏は当初、5日の来県を予定していたが、4日昼になって在京メディアに「沖縄行きを中止する」とわざわざ通知した上で、直後の夕刻に沖縄入りするという不可解な行動を取った。メディアや県民を欺く来県は、民主党県連の喜納昌吉代表代行が4日午後に搭乗した羽田発那覇行きの飛行機に、前原氏が同乗していたことから、あっけなく発覚した。党の「身内」から情報が漏れる脇の甘さは何ともお粗末である。

 

 前原氏はなぜ、TPPをめぐる党内論議の渦中に、県民の不審を買うリスクを負ってまで、「極秘来県」を敢行したのだろうか。

 

 前原氏の行動は一見、知事への義理を重んじたように映る。が、その意識は沖縄を飛び越え、米国を向いている、と解した方が腑(ふ)に落ちる。

 

 元外交官の孫崎享氏は10日付の本紙文化面で、TPP論議と普天間問題の既視感を指摘している。よく分からない「抑止力のために海兵隊は必要」との論理で日米合意に戻った普天間問題と同様、よく分からない「日本経済の活性化のためTPPに参加しなければならない」との論が展開されている、というのだ。米国基準のTPP参加を促す推進派は、鳩山由紀夫元首相の「最低でも県外」方針に非難や冷笑を浴びせた「安保マフィア」と重なる。

 

 9月の日米首脳会談で、普天間問題の進展やTPP参加への努力を迫られた野田首相は、この「宿題」を果たすため、閣僚の「沖縄詣で」やTPP参加への見切り発車を決意したのではないか。

 

 多極化する時代に「対米外交がすべてに優先する」という凝り固まった価値観にとらわれていては選択を誤る。これからの時代を託す政治家の理念としては単層で危うい。

 

 県議会は、普天間飛行場の辺野古移設に向けた環境影響評価書の年内提出について、政府に断念するよう求める意見書を14日の臨時議会に提案し、全会一致で採択される見通しだ。

 

 この動きを、ぜひとも県内の市町村議会に広げ、思考停止状態の中央政治家に県民の強い民意を突きつけておく必要がある。