核サミット 「発射阻止」へ次の一手は
2012年3月28日 11:14 カテゴリー:コラム > 社説
韓国のソウルで26―27日、核安全保障サミットが開催された。
サミットの主要議題は核物質を狙うテロの防止策だったが、集まった米国のオバマ大統領をはじめ中国、ロシアの首脳たちは、韓国の李明博(イミョンバク)大統領も交えて精力的に個別会談し、北朝鮮の「衛星」打ち上げ問題への対応を協議した。2日目は日本の野田佳彦首相も加わった。
北朝鮮が予告している衛星の打ち上げは、実質的には長距離弾道ミサイルの発射実験とみられる。一連の会談では、普段は後見役として北朝鮮の擁護に回る中国の胡錦濤主席が、打ち上げへの懸念を表明し、その阻止に向けて日米韓などと緊密に協調する姿勢を示した。
北朝鮮の友好国ロシアのメドベージェフ大統領も「北朝鮮はミサイル発射の前に、住民を食べさせなければならない」と、発射反対の立場を明確にした。
日米韓の3国に加え、中国とロシアが「発射阻止」の方針を示したことで、6カ国協議の参加国のうち北朝鮮を除く5カ国の足並みがそろった。北朝鮮に対する包囲網の形成が一歩進んだ意義は大きい。特に中国が、日米韓との濃淡はあるにせよ、北朝鮮の核・ミサイル開発への危機感を共有したことは評価できる。
サミットの場で、発射阻止への強い意気込みを見せたオバマ大統領は26日、ソウル市内で演説し、北朝鮮の新指導者である金正恩(キムジョンウン)氏を念頭に、こう語った。
「平壌にいる指導者に直接、呼び掛けたい。米国はあなた方の国に敵意はない」「北朝鮮が核兵器開発を続ければ、さらなる孤立と強い制裁を招く。挑発行為に対する見返りはない」
余計な警戒感を捨てて核やミサイル開発を放棄し、国際社会との協調路線へ踏み出すよう求める異例のメッセージだ。北朝鮮の新指導部が、この呼び掛けを真摯(しんし)に受け止めることを期待する。
しかし、現実には、北朝鮮が現在の姿勢を改める兆しはない。北朝鮮外務省は27日、オバマ演説への非難を表明し、発射中止を拒否する構えを示した。「発射阻止」で一致した5カ国は、北朝鮮が予告通り発射に向かう事態を想定し、次の一手を準備する必要がある。
中国が今回、日米韓と協調したのは、発射によって2月の米朝合意が無効となり、北朝鮮にウラン濃縮を中止させるてこを失うことを恐れたためとみられる。米朝合意を足掛かりに6カ国協議再開を目指してきた中国は、無用な騒動を繰り返す北朝鮮に不信感を強めている。
だが、日米韓が国連安全保障理事会で非難声明や制裁決議の採択を目指した場合、中国が同調する可能性はまだ低い。中国は2月に高官が訪朝して食糧支援を協議するなど、北朝鮮の後ろ盾であり続ける意思を捨てていないようだ。それでは、状況はこれまでと変わらない。
一部がほころびていれば包囲網にならない。中国が言葉だけでなく行動で、対北朝鮮のスクラムに加わるよう望む。
=2012/03/28付 西日本新聞朝刊=