日韓問題先鋭化
2012年8月27日
大局観に基づく外交を
竹島や尖閣諸島、北方領土といった、領有権に絡んだ日本と周辺国との摩擦問題に、米国をはじめとする関係各国も注視し始めた。
米国の超党派による外交・安全保障専門家らが、米国の対日政策や日本の政策方針について提言した報告書にも、それが表れている。
取りまとめの中核になったのは、元米国務副長官のリチャード・アーミテージ氏やハーバード大教授のジョセフ・ナイ氏らだ。
報告書は「日本が二流国になることに満足するならこの報告は興味深いものではない。だが日本の重要性は衰えておらず、一流国としての力もある」との厳しい指摘で始まる。
「地域の安定には強固な日米韓関係が重要」とも強調。6月に東シナ海で日米韓3カ国が実施した共同演習にも言及し、横須賀に配備された原子力空母ジョージ・ワシントンや海上自衛隊、韓国海軍が参加した演習を「歴史問題での対立を棚上げし、より大きな脅威に立ち向かうための正しい一歩だ」と評価した。
その一方、李(イ)明(ミョン)博(バク)大統領の竹島訪問で冷却化した日韓関係について、「同盟の潜在力を実現するため、韓国との関係を複雑にしている歴史問題に向き合うべきだ」と日本に促している。
米国にすれば、核やミサイル開発を進める北朝鮮や軍事的台頭の著しい中国を牽制(けんせい)するには、日米韓の円滑な関係が不可欠である。米国務省の報道官が「同盟国の間の争いは快いものではない」と述べたのは当然だ。
李大統領の竹島上陸後、韓国政府が示している行動は冷静さを欠いていると言わざるを得ない。野田首相の親書を返送した振る舞いなど外交上の慣例を明らかに逸脱している。日本は竹島問題を国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針であり、主権に関わる領土問題では毅(き)然(ぜん)とした対処は当然だ。
ただ、そうした日韓両国の対立関係が他の周辺国を含めたアジア太平洋地域の安定に悪影響を及ぼすような事態は何としても回避する必要がある。
韓国では12月に大統領選が実施される。対立をこれ以上先鋭化させず、次期政権の発足を見据えて、対話の道は確保していくべきだ。
関係各国が先行きを見守っている今こそ、大局に立った外交努力が試されている。日韓両政府には冷厳な現実をかみしめてほしい。