2012102()

 

オスプレイ配備 日本政府に重大な責任

 

またしても沖縄の声は無視された。安全性への懸念が払拭(ふっしょく)されないまま、米軍の新型輸送機MV22オスプレイが普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備された。

 

ゲート前で住民と警官隊がにらみ合う中での「強行」であり、極めて遺憾だ。地元首長からも「怒り心頭」「理解を超えた話」と強い非難の声が上がっている。

 

これにより最も重い責任を負ったのは日本政府だ。今年発生した2件の墜落事故も踏まえた上で「運用の安全性は十分確認された」と宣言したのだから当然だろう。肝に銘じてもらいたい。

 

政府は喫緊の課題として、自らがお墨付きを与えた運用状況を監視し、問題があれば直ちに米軍に是正させなければならない。しかし、相手は即応性最優先の軍隊である。過去の例を見ても、それすら簡単ではない。覚悟して臨んでほしい。

 

安全宣言に当たって日米は安全確保策で合意した。これがくせものだ。深夜・早朝の飛行制限、人口密集地を避けた飛行経路設定。どれも「可能な限り」「運用上必要な場合を除き」の条件が付けられた。

 

1996年に日米が締結した嘉手納・普天間両飛行場の騒音防止協定と同じだ。この協定では午後10時〜午前6時の飛行が制限されたが、あくまで「必要と考えられる範囲内」であり、実態として守られてはいない。

 

2010年、国に住民への37千万円近い賠償を命じた普天間爆音訴訟の福岡高裁那覇支部判決は「国は適切な措置を取らず、協定は事実上形骸化している」と断じ、04年に普天間隣接の大学に米軍ヘリコプターが落ちた事故に触れ、「住民の墜落への恐怖は現実的なものとなり、精神的苦痛が増大している」とまで指摘した。この司法判断は確定している。

 

政府は判決に押される形で、米側に夜間の飛行自粛をあらためて要請。「順守する」との回答を得たが、いまだに実現していない。沖縄県の測定では、11年度も普天間の夜間騒音回数は年間約670回に上った。

 

その結果、今年も住民による爆音訴訟の提訴が続いている。オスプレイについて、新たな訴訟も予想される。法律上、飛行差し止めが認められる可能性は低いだけに、政府が「賠償金を支払えば済む」という意識でいるなら許されない。オスプレイの試験飛行で既に、山口県下関市議会が「事前説明のルートと異なる下関市街地上空を低空飛行した」と批判する意見書を可決している。政府は無条件に約束を守らせるべきだ。

 

ただ、沖縄がオスプレイ配備を受け入れることは、将来にわたってないだろう。航空機のトラブル根絶は不可能なのに、周辺に住宅などが密集する「世界一危険な飛行場」普天間で未経験の新型機を運用する。それを簡単に「安全」と宣言する政府は信用されまい。

 

15年以上も前に、米側から配備計画の説明を受けていながら沖縄には隠してきた過去を重ね合わせ、不信はピークに達している。国民の理解が得られない日米同盟の深化は困難だろう。

 

万一の場合でも被害を最小限に抑える安全確保策の徹底は、政府の最低限の責務にすぎない。航続距離が長いオスプレイの特性を生かしたグアムなどへの後退配備、さらに普天間返還の実現が課せられた本来の義務だ。