11から10年 米国になお続く苦渋の時代(99日付読売社説)

 

 2001年9月11日の米同時テロで崩落したニューヨークの世界貿易センタービルの跡地で、復興のツチ音が響く。

 

 追悼記念公園の隣に、完成すれば全米一となる高層ビルが威容を見せている。

 

 悲劇の記憶を新たにしつつ、未来への歩みは止めていない。米国の力強さを感じさせる光景だ。

 

 同時テロは、米国と世界に大きな衝撃を与えた。冷戦後、比類なき力を誇っていた唯一の超大国は、19人のテロリストが乗っ取った民間航空機で攻撃された。約3000人もの犠牲者を出した事件を忘れることはできない。

 

 国際テロ組織アルカーイダの奇襲に対し、ブッシュ前政権が、「対テロ戦争」で反撃を開始したのも無理はなかった。

 

 あれから10年。アフガニスタンで始めた戦争はまだ続いている。長い追跡の末に同時テロの首謀者ビンラーディンは殺害されたが、テロ掃討の戦場はパキスタンへと広がっている。

 

 欧州との亀裂の末に突入したイラク戦争では、開戦理由の肝心の大量破壊兵器が見つからず、米国の威信に大きな傷がついた。武力行使に苦い教訓を残した。

 

 米国内では、テロ対策で空港の保安検査は厳重になり、イスラム教徒や移民への偏見も広がった。かつてのような自由や寛容さは社会から失われたように見える。

 

 戦争で、米軍には6000人を超す死者が出た。13兆ドル(約100兆円)の戦費は財政危機を悪化させ、金融危機も重なった。米国には苦渋の時代だった。

 

 米国では、失業率が高止まりし、消費は低迷している。米国民の関心は、景気や税金、雇用など経済や生活に集中している。

 

 オバマ大統領が「国の再建に注力するときだ」と内向き志向を強めたのも、米国の力の“衰退”に強い危機感があるからだ。

 

 疲弊する米国とは対照的に、新興国がちょうどこの時期、高度経済成長を遂げた。なかでも台頭が著しいのは中国だ。日本を抜いて世界第2の経済大国となり、軍事力も盛んに増強している。

 

 世界の多極化は進むだろう。だが、国際秩序を破壊する国際テロなどの脅威に対処していくうえで、中心的な役割を担える国は米国のほかにはない。世界の安全保障の要として、米国は揺るがず責任を果たしていく必要がある。

 

 日本にとっては、屈指の成長拠点であるアジア地域の安定を図るために、日米同盟を深化させていくことが極めて重要である。

 

2011990125  読売新聞)