3・11後の外交 萎縮せず国際的役割を果たせ(4月22日付・読売社説)
東日本大震災を踏まえて、日本はどんな外交を展開すべきか。
内向き姿勢に陥らず、国際社会に積極的に関与することが、国家の活力を高め、復興を進めるうえでも重要となろう。
菅首相が21日、来日したギラード豪首相と会談し、エネルギーや災害救援の分野で日豪協力を強化することで一致した。こうした場で、日本は復興・再生への決意を明確に発信することが肝要だ。
今月9日にはインドネシアで、日本と東南アジア諸国連合の特別外相会議が開かれた。インドネシアが「長年支援してくれた日本に我々が連帯を示す番だ」と開催を呼びかけ、実現したものだ。
震災後、170以上の国や国際機関が日本支援を表明・実施しているのは、日本が各国と連携し、援助してきたからこそだ。
被災地の復興には、膨大な資金と人手を要するだろう。だが、国内だけに気をとられ、国際的な視点と役割を忘れてはなるまい。
まず、政府開発援助(ODA)の削減は極力避けたい。
政府は、復旧・復興対策の第1次補正予算の財源として、5727億円のODAの2割減を検討した。削りやすい分野を削るという安易な発想だったが、異論が噴出し、削減幅を1割減に抑えた。
日本のODA予算は12年連続で減少し、今はピーク時の半分だ。かつての世界1位から5位に転落した。この間、新興国の台頭もあり、日本の発言力は低下した。
国際社会での影響力を維持するには、世界3位の経済大国に見合う貢献を続ける必要がある。
環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題も、先送りすべきではない。菅政権は6月に結論を出すとしていたが、震災後は国内外の調整作業が止まっている。
11月の妥結を目指す米豪など9か国に日本が取り残されないように、国内農業改革や関係国との交渉を着実に進めたい。
国連平和維持活動(PKO)への関与も大切だ。大震災で自衛隊は大きな実績を上げたが、国内活動だけにとどまらず、南部スーダン独立後のPKOなどへの参加を前向きに検討すべきだ。
今年の主要国の外交では、防災協力と原子力発電所の安全確保が重要議題となる。特に、被災国の日本の行動は注目されよう。
震災や原発事故の体験から様々な教訓をくみ取って、あるべき国際協力について具体的に提言し、議論をリードする。それが、各国の支援への恩返しともなる。
(2011年4月22日01時23分 読売新聞)