具体的な安全対策急げ 福島第1原発事故

 

20110606 12:37

 

 福島第1原発事故の収束にめどが立たず安全対策が遅々として進まない中で、国民の放射性降下物に対する不安は依然として大きい。報道は不安を助長したり新たな風評被害を生起させてはならない。しかし、正確な事実を迅速に伝えることや国の具体的な安全対策を加速させることは強力に訴えていきたい。子どもたちを最優先に国民の生命財産を守ることが国の基本的責務と考えるからだ。

 

 太平洋戦争末期、米軍により広島、長崎に原爆が投下され約30万人の人命が失われ、今も後遺症に苦しむ人々が存在していることは痛苦な歴史的事実。1950年代、米英仏ソが核実験を繰り返していたころ、国内では核実験反対運動が大きな広がりをみせた。しかし、時の流れの中で、そうした事実や国民が危惧した放射能禍の不安も風化していった観がある。

 

 国内に原発が次々に建設され一時「原発反対」運動が起こったが、安全性と低コスト、環境的にも二酸化炭素削減に寄与する-を強調して推進を図った時の政府の政策は今日まで連綿として継続され、マスメディアや国民も大きな関心を払っていたか、どうかは疑問である。福島第1原発事故に遭遇し初めて国内には商用原発が54基あり、その数はフランスに次いで世界第3位という事実に驚かされた。

 

 原子力の関係機関は「正しい知識で正しく扱えば放射線は怖くない」と強調する。しかし、一般国民はそれで納得できるのか。農産物や魚介類など水産物のすべてに安全を推し量る基準値が定められているわけではない。放射性物質の健康への影響度はすべて解明されているとはいえないのが現状ではないか。

 

 どの党の何政権であれ喫緊の課題は歴然としている。今回の東日本大震災で、人災的側面のある福島第1原発事故。東北や本県をはじめとする関東さらに甲信越地方では、この先、相当長期にわたり放射能禍の不安にさらされることになる。福島第1原発からの放射性物質発生封止の措置を急がねばならない。加えて関係する地域での測定地点を増やすなど徹底した測定と正確なデータの公表が大前提。原子力発電を継続するとしても根本的安全対策は可能なのか。ドイツのように「脱原発」国家に向かうのか。エネルギー戦略構想策定も急ぐべきであろう。