円売り介入―「ドル安」阻止へ協調を

 

 戦後最高値をうかがう円高ドル安の進行を阻止すべく、政府と日銀が連係プレーに踏み切った。きのう外国為替市場で単独の円売り介入を行うと同時に、追加の金融緩和を決めた。

 

 東日本大震災からの復興を急ぐ日本経済は輸出を頼みとしたいところだが、ここを円高が圧迫している。市場の行き過ぎた動きは断固として封じるという当局の強いメッセージを発した意味は大きい。

 

 ただ、日本単独では影響力に限りもある。欧米など主要国との連携を密にしてほしい。政府には成長戦略の強化など総合的な対策も求められよう。

 

 一連の円高は日本経済が評価された結果ではない。米国で債務上限の引き上げをめぐる調整が難航し、米国債やドルの信認が揺らいだことが大きい。

 

 加えて、4~6月期の実質成長率は年率換算1.3%とふるわず、米国経済への先行き不透明感が強まっている。これを受けて、ニューヨークをはじめ世界の主要株式市場が値下がりし、ドルが売られている。

 

 ドルを離れたマネーが円に流れ込むのは、先進国の中で金融情勢が比較的安定しており、資金運用できる市場の規模も大きいためだ。

 

 受け皿となるべきユーロは財政不安がイタリアにも飛び火しかねず、主に買われるドイツ国債も発行規模が少なく、大量のマネーを抱えきれない。いわば、消去法としての円買いである。昨夏の円高の時と同様の構図が繰り返されている。

 

 為替介入だけでは力不足のため、日銀はきのうから2日間の予定だった金融政策決定会合を1日に短縮し、追加の金融緩和策を打ち出した。資産を買い入れたりするための基金の規模を40兆円から50兆円に増やす。

 

 日本の市場介入は大震災直後の3月18日以来、4カ月半ぶりだ。このときは「日本の企業が震災で受けた損害を埋め合わせるため海外資産を売り、ドル売り円買いに出る」と見込んだ投機筋が先走った。主要7カ国(G7)が一致して協調介入して相場の混乱を収拾した。

 

 日本からは円高にみえる今回の流れは、世界的に見ればドル安だ。スイス当局も利下げを決め、介入姿勢を強めている。

 

 米国政府は、自国の政治的混乱に伴う米国債の債務不履行や格下げの危険性という歴史的にも異例の事態が、通貨の変調をもたらしていることをしっかり認識してほしい。そのうえで、基軸通貨ドルの価値を守るという姿勢を明確にし、市場の思惑を鎮めなければならない。