社説:大震災と日本経済 国際協調で苦境克服を

 

 素早い対応である。先進7カ国財務相中央銀行総裁会議(G7)は18日、緊急電話会議を開き、日本、米国、英国、カナダの各国通貨当局と欧州中央銀行(ECB)が円売りの協調介入実施で合意した。

 

 政府、日銀が早速、為替介入を実施し、東京外国為替市場の円相場は1ドル=81円台と一気に2円ほど円安になった。今後も国際協調で円相場が適正な水準を維持することを望みたい。

 

 東日本大震災と福島原発事故で日本経済が受けたダメージは計り知れない。にもかかわらず外国為替市場では17日、円が急騰して1ドル=76円25銭と戦後最高値を約16年ぶりに更新した。

 

 そもそも1日に5円近く急騰するような円高は異常事態としか言いようがない。背景には投機的な思惑があると指摘される。円高で輸出企業を中心にさらなる打撃を受けかねない。看過できない事態だ。

 

 更新される前の戦後最高値は1995年4月の79円75銭。阪神大震災があった年だ。今回の円急騰の背景に、「震災イコール円高」という連想があったという見方もある。

 

 日本の保険会社が震災被害に対する巨額の保険金支払いに備え、資産を海外から引き揚げるとの思惑に乗じて投機筋が円買いを仕掛けたという見方が出ている。保険各社は外貨資産を売って円に転換した事実はないとしており、意図的に流された風評の可能性も否定できない。

 

 大震災と原発事故によるダメージに加え、急激な円高が日本経済に追い打ちをかける恐れがあるとの見方から、株価は今週、一時大きく値を下げた。消費者心理を一層冷やすことにつながるようなら影響は深刻だ。

 

 震災による経済的被害の全容が明らかとなるのはまだ先のことだ。しかし東北の太平洋岸に立地する企業の生産拠点の多くに甚大な被害があったことは確かだ。水産業や農業、観光など幅広い産業に影響があろう。

 

 中でも東京電力福島第1原発の事故が解決の見通しが立っていないのは気掛かりだ。放射能漏れの範囲を広げず、事態を収拾することを望みたい。

 

 東北電力は女川原発や太平洋岸の火力発電所がストップ。東京電力と同様、電力供給面で不安が生じている。計画停電の長期化は、企業の生産活動の妨げになろう。雇用や景気への影響も心配だ。

 

 日本経済の混乱を避けるため日銀は追加的な金融緩和を実施した。今は何より官民が力を合わせてこの苦境を乗り切っていくことが求められる。

 

 リーマンショックからようやく回復しつつある世界経済を日本の大震災をきっかけに再び危機的状況に陥らせてはならない。経済の不安定要因となりかねない過度な為替変動を抑制することで各国が一致したのは、その危機感の表れだろう。G7の協調介入合意を、力強い連携の第一歩と受け止めたい。\

 

2011/03/19 10:16 更新)