米大統領選/共和党候補の資質焦点に
米大統領選の共和党候補選びが混沌(こんとん)としている。本命のロムニー前マサチューセッツ州知事が党の指名獲得に必要な代議員数を得るのに時間がかかっている。「穏健派」対「保守派」という同党の内部対立のためだ。
州ごとに行われる予備選・党員集会が集中した今月6日のスーパーチューズデーに続き13日の予備選でもアラバマ州とミシシッピ州という南部の重要州でロムニー氏は勝てず、焦点となるホワイトハウスを狙う資質が十分でないことを浮き彫りにした。
民主党が強い北東部や西海岸の各州はオバマ大統領が有利だから、共和党候補は南部を固めないと勝ち目はない。最近の共和党大統領は皆、南部を固めた上で北東部や中西部、西海岸の各州で攻勢をかけている。資金力に勝るロムニー氏は、最終的には指名候補の地位を勝ち取るだろうが、焦点となる本選での強みという点で、不安を残した。
ロムニー氏の不振は、(1)妊娠中絶や医療保険改革など重要課題で共和党の核となる支持者には穏健過ぎる(2)発言がころころ変わり信念がない印象がある(3)宗教的少数派のモルモン教徒である―が理由とされる。さらにここに来て経済の好転という理由も加わった。
ロムニー氏は実業家として「効果的な経済政策を打ち出せる」を売り物にする戦略だった。リーマン・ショック以後の景気低迷こそ、米国の課題だったためだ。
しかし、失業率が下がり始め、経済指標は景気が上向きに転じつつあることを示し、ロムニー氏の「オバマ氏は経済が分からない」という攻撃が通じなくなっている。
経済で攻め手を欠く一方、指導力のなさなど欠点が表面化しだした。草の根保守運動のティーパーティー(茶会)は、ロムニー氏の代表する共和党穏健派は「小さい政府」という保守の原則に忠実でないと攻撃している。インターネットなど新しいメディアを使う茶会の動員力は侮れない。
民主党内のアイデンティティーをめぐる戦いは、リベラル派と中道派の間で長く続いている。中道派(クリントン元大統領)が勝利したこともあるし、リベラル派(オバマ氏)が天下を取ったこともある。
過去の米大統領選では党内の対立する派、あるいは相手党の良い政策や主張を取り入れて自らの公約を、より国民の賛同を得られるものに変え、相手陣営の支持者を取り込んだ候補が勝利した。保守、穏健、リベラルなどとレッテルを貼られても、いざ政権に就けば、内外の課題に直面し主義主張を超えた政策を遂行している。
茶会派や、ニューヨーク・ウォール街を占拠しオバマ政権を攻撃して話題になったリベラル派市民などの、草の根の市民運動は官僚組織の肥大化、貧富の拡大、財政赤字、国民の自由の制限など、米国の病巣を指摘する。
これらは先進民主主義国が共有する課題だ。米国がどんな改革を実現するかを、世界が見守っている。大統領選の候補者選びをめぐる共和党の対立は、よりよい政策を築く真剣な戦いであってほしい。それこそ世界のリーダーを選ぶ大統領選の意義でもある。