廃炉作業の改善策/安全最優先で着実に進めよ(11月10日付)

 

東京電力は、福島第1原発の廃炉作業に関し、労働環境の改善策をまとめた緊急安全対策を発表した。大型の休憩所を新設するほか、構内の除染を進め、非効率的とされる全面マスクを着けずに作業できるエリアを拡大する。協力企業の作業員の割り増し手当を1日1万円から2万円に引き上げることも盛り込んだ。

 

社員や作業員の士気を高め廃炉作業を加速させたい考えだ。廃炉では汚染水対策が喫緊の課題で、今月中旬からは4号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出しが始まる。放射線量が高い現場では、緊張した作業が続く。現場の安全を確保し、廃炉作業を着実に進めてもらいたい。

 

第1原発では人為的なミスによる汚染水漏れが相次いでいた。このため原子力規制委員会の田中俊一委員長(福島市出身)は10月28日、東電の広瀬直己社長と面談、汚染水漏れへの対応をただし、作業環境の改善を求めていた。

 

汚染水問題をめぐって規制委は、対策が不十分として東電の柏崎刈羽原発6、7号機の安全審査を凍結している。これに関し、田中委員長と広瀬社長との面談に同席していた原子力規制庁の池田克彦長官は、安全審査は汚染水問題への取り組み次第との考えを示していた。

 

東電は、汚染水問題への対応や規制委の指摘を踏まえて今回の緊急安全対策をまとめたとしている。国が対策を促すのは当然だが、東電に指摘しておきたいのは、柏崎刈羽原発の安全審査を受けるためという前提の対策にとどめてはならないということだ。

 

本紙は連載企画「原発災害 『復興』の影」で、作業員の声を拾い、単純なミスが絶えない現場の現状や作業環境の悪さを提起してきた。東電には、作業環境の改善は最優先に取り組む対策であることを肝に銘じるべきだ。

 

緊急安全対策の発表で東電は、作業員の割り増し手当の額を初めて明らかにした。廃炉作業は多層的な請負構造となっており、東電と契約した元請け業者から下請け業者を経る間に人件費が圧縮され、作業員の手元に入る割り増し手当分が減らされるケースが指摘されてきた。

 

金額を明らかにすることで東電は、作業員に支払われる手当が減るのを抑える効果があるとしている。線量管理の面から同じ現場で長く働くことはできず、作業員の確保が課題となる。作業員が意欲的に働くために必要な措置といえるが、多層的な請負構造そのものの実態にも目を配っていく必要がある。

 

緊急安全対策とは別に東電は、管内の全10支店を全廃し、支店勤務の社員から1000人程度を本県での復興事業に充てる方針を固めた。経験と技術を持った人材を集中させ、廃炉作業により力を注いでもらいたい。